
株式会社金子商店(結の蔵)/代表取締役社長 金子 真人
埼玉県川越市で老舗の米穀店「株式会社金子商店」を経営する傍ら、五ツ星お米マイスターとして数々のメディアに出演。全国各地で講演や食育活動を行い、お米の魅力発信に精力的に取り組んでいる。
米産地としての新潟の魅力は懐が深いこと。
メニューに合うお米が、きっと見つかります。
五ツ星お米マイスター金子さんのお店・結の蔵では、ごはんを食べる喜びをより多くのお客様にお届けするため、全国の産地に足を運んでお米を厳選しています。日々、全国各地のお米と向き合う金子さんに新潟の魅力を伺うと、意外な答えが返ってきました。
さまざまな人たちがお米に関わっている
「雪深くて水資源に恵まれているなど、米づくりにマッチする環境もあると思うのですが…新潟県が米づくりで際立っているのは、やはり収穫量だと思います。収穫量が多いというのはつまり、生産者以外にも農協や営農指導の方、市町村の農林水産部、地域振興局、農業総合研究所など、さまざまな人たちがお米に関わる仕事をしているということなんです。米づくりのためのサポートが充実していて、品種改良や流通の体制も整っている。そういう協力すること・支え合うことは米づくりですごく大切で。その点、新潟のお米はポイントが高いですね」

米づくりの技術・基盤が受け継がれているから、
多種多様なお米が生まれる
「お米は1年に1回しか収穫できません。例えば20歳から80歳までお米づくりをしたとしても、たった1人で完結するとしたら60回しか生産できないことになります。60回というと多く聞こえるかもしれませんが、栽培技術を確立するための統計を取ったり、ノウハウを蓄積するには、決して多いとは言えないんです。でも新潟は昔からお米づくりが盛んで、何代にもわたって受け継いできた栽培技術があるし、田んぼや水路など、『みんなが米づくりできる基盤』がある。米づくりをする地域として、とても恵まれていると思います」
「そういった米づくりの技術と基盤がそろっているからこそ、収穫量が多くて、多種多様な品種が栽培されているのだと思います。新潟はつまり、とても懐が深い産地なんです。飲食店でもお弁当でも、どんなメニューにも合うものが見つかるくらい、さまざまなタイプのお米がそろっていると思います。」
喫茶店のブレンドコーヒーのように
味わいのハーモニーを極める『ブレンド米』。
メニューに合わせたブレンド米の開発を手掛ける金子さんに、「ブレンド米とは何か」を教えていただきました。
「例えば喫茶店でコーヒーを頼むときのことを想像してみてください。モカ、キリマンジャロ、ブルーマウンテンなど…たくさんメニューがあっても、ブレンドコーヒーを注文することが多いのではないでしょうか?それはおそらく『コーヒーのプロがおいしさを見極めてつくったブレンドだから、きっとおいしい』という期待感からだと思います。そんな風に『プロがつくったおいしいもの』として選んでもらえる。そういうイメージを持ってもらえるブレンド米を目指しています」と金子さんは言います。

ブレンド米を開発するとき、多いときには100 回近く配合を見直すという金子さん。それくらい手間をかけて生まれたブレンド米は、メインとなる料理・メニューと合わさったときに、一流のオーケストラが奏でる音楽のような、すばらしいおいしさのハーモニーを生み出すそうです。
「『ブレンドしたら悪いお米が入っていてもわからないんじゃないか?』と思われるかもしれません。でも実際にはプロのオーケストラの中に素人が混ざっているようなもので、雑音が入って調和がとれなくなるんです。オーケストラの音楽のように、お米もいいものといいものを合わせて、ようやくすばらしいハーモニーが生まれます」
「食感・ねばり・かたさ・味を調整するには、ブレンド以外にも品種改良するという方法がありますが、それには10年近くかかります。でもブレンドなら10年もかけることなく、目指すおいしさをかたちにすることができるんです。例えば、やわらかくて粘りのあるお米はすぐに味が出ます。でも先にメインの料理を味わってから、お米の味が出てくれた方が、全体としてものすごくおいしく感じられることもある。そういう食べた人の満足感を考えて、単品で食べてもおいしいお米を、料理と合わせたときに一層おいしく感じられるバランスを考えてブレンドしています」
ブレンド米というと「あまり品質のよくないお米を混ぜている」イメージがあるかもしれません。けれど反対に、良質のお米を手間をかけて調整した「おいしさのハーモニーを奏でるブレンド米」があることを、金子さんから教えていただきました。
株式会社金子商店
所在地:埼玉県川越市宮下町1-12-7
TEL:049-222-0143 (代表)
