
麻布 和敬/店主 竹村 竜二
東京・麻布『分とく山』で修業後、地元の愛媛県で日本料理店を開店。そののち、移転する形で2018年に『麻布 和敬』をオープンした。自身が体感した時代の流れを汲みながら「10年経っても色あせない、現代の日本料理」を志している。
個性豊かな品種がそろう新潟米。
そこから生まれる新たな発想。
ミシュランガイド東京2022で一つ星を獲得するなど、グルメ通からの信頼も厚い『麻布 和敬』。日本料理の基本を守りつつ、現代的なエッセンスも取り入れるという思いのもと、店主の竹村竜二さんは日々食材と向き合っています。
メニューは昼夜ともに、季節変わりのおまかせコースのみ。そのシメに出てくる土鍋炊きの炊き込みご飯が、同店の名物でもあります。「トウモロコシや鮎など、その時期ならではの味覚を炊き込みご飯にして楽しんでいただいています。お米と具材の旨味によって味が決まるため、お米選びが要になってきます」と竹村さん。そのお米自体が持つおいしさを引き出すためには、炊きかたも重要です。「大切なのは浸水時間と炊くときの水分量、そして年間を通して水の温度を一定にすること。水分を多く含む新米の時期は炊飯時の水を減らすなど、気候やお米の状態によって調整しています」。

竹村さんが選ぶお米は、「噛んだときの弾力にくわえて、飲み込むまでに広がる甘み、鼻に抜ける香りがいいこと。僕は炊き込みご飯にするため、小粒でふっくら控えめな甘みかつ、具材を引き立ててくれるかも重視します。開店時から新潟県産のコシヒカリを使っていましたが、今回『新潟米倶楽部』を見て、新潟米にはこんなに多くの品種があるんだと驚きましたし、興味がわきました」。
そこで竹村さんに、新潟県産の『新之助』、『つきあかり』そして改めて『コシヒカリ』の3種を試食していただきました。同じ条件下で炊いた結果、「どれも冷めたあともおいしく、そのなかで見えてくる個性がおもしろい」との声が。「新潟県は昼夜で寒暖差があり、水もきれいな地域なので、いいお米が育ちやすいのだと実感しました。『コシヒカリ』はもっちりと柔らかな粘り気があり、全体的にバランスがいい。一般的なお米よりも小粒で、ほかの具材と合わせてもほどよく主張してくれる甘さです。新潟県を代表するお米ですし、シンプルに白米として召し上がっていただきたいですね」。
『新之助』については「3つのなかでは一番固く、香りも含めてすっとした味わい」とのこと。「食味を生かすなら、リゾットやお茶漬けなど、ダシを使った調理法と相性がいいでしょう。そして『コシヒカリ』と『新之助』の間くらいの固さだったのが、『つきあかり』。いい意味でもちっとしていない若々しさがあり、ほどよい食感でした。炊いてから食べるまでに時間が空くお弁当に入れるなら、こちらを選びます」。
「食べ比べたことで各品種の個性がはっきりと分かりましたし、新潟県を代表するお米である『コシヒカリ』の良さも改めて再認識できました。また、『新潟米倶楽部』でそれぞれの生産者さんの顔が見られたのも、味わい深さに繋がりましたね。お米の粒の大きさ、固さなどの特徴も利用する方にはぜひ注目してご覧頂きたいと思いました。」

「そして、炊き込みご飯の具材によってお米を変えるのもありだと思いました。同じものを使う安定感もいいですが、各食材と相性がいいお米を合わせれば、新たなおいしさが生まれるのではと。お米はあまりフォーカスされない、一見“無”に近いものですが、日本料理の味を支えてくれる存在です。和室でいうと畳のようなものでしょうか。いろいろなお米を試しながら、引き続き時代に沿って進化していきたいですね」。
麻布 和敬
所在地:東京都港区西麻布2-7-9
TEL:03-3486-0149 ※前日までに要予約